2024.3.31
NO.135

「ワールド・シアター・ラボ」2022〜2023 
寄稿:柏木俊彦

3年目を迎え、ますます内容充実の「ワールド・シアター・ラボ」

ITI日本センターでは、海外で創作された現代戯曲の翻訳と上演を通して、次代を担う翻訳者の紹介・発掘を行っています。


「ワールド・シアター・ラボ」は、海外で創作された現代戯曲の翻訳と上演を通して、次代を担う翻訳者の紹介・発掘と、同時代の世界の現実をよりよく理解する視点に触れる機会をつくることを目的に2020年度よりスタートしました。

3年目を迎える2022年度は、「リーディング公演」のほかに、「海外戯曲の戯曲読解オンライン・ワークショップ」「海外戯曲の戯曲読解から場面を立ち上げるワークショップ」の計3企画を開催いたしました。その中で、今回は「海外戯曲の戯曲読解から場面を立ち上げるワークショップ」「リーディング公演」の2つを取り上げることにいたします。

新企画として2021年度より「海外戯曲の戯曲読解から場面を立ち上げるワークショップ」を展開しています。2022年度も、竹中香子氏のファシリテートのもと、北マケドニア戯曲『Big Deal』(作:ミア・エフレモヴァ、翻訳:万里紗)を題材に取り組みました。万里紗氏の作家解説から始まり、各場面をグループでディスカッションしながら立ち上げて行く過程を味わいました。読むだけではイメージが捉えにくいミア・エフレモヴァの戯曲を、身体を使いながら立ち上げていく取り組みは、解釈を深めていくには適した試みだったと感じました。参加者からは継続を期待する声が届いています。

「リーディング公演」(於:上野ストアハウス)では、イギリス戯曲『ロッテルダム』(作:ジョン・ブリテン、翻訳:一川華)とキューバ戯曲『若造(チャマーコ)』(作:アベル・ゴンサレス=メロ、翻訳:仮屋浩子)の2作品を取り上げました。2作品ともテーマにジェンダーや貧困の課題がありました。そして、2戯曲とも、時系列が錯綜し戯曲内に身体的表現も多く、上演前にはリーディングに不向きな作品と実行委員内でも少々懸念がありました。しかし、シンプルに台本を「読む」ことに注力し、空間を巧みに使いながら観客の想像力との相互関係で作品を立ち上げた両演出家(EMMA氏、西沢栄治氏)の手腕は見事なものでした。好評のうちに終わったことを付け加えておきます。

今回も多くの方に支えられ、無事に全ての企画を終えられたこと、この場をお借りしまして深く感謝を申し上げます。

柏木俊彦 (「ワールド・シアター・ラボ」ディレクター、第0楽章、日本演出者協会副事務局長)

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