2024.3.31
NO.135

アートキャラバン(名古屋・焼津・吹田・串本公演)
寄稿:坂手洋二

「わが友、第五福竜丸」公演の実施報告 〜第五福竜丸のルーツと軌跡を辿る旅〜

ビキニ環礁における第五福竜丸の被爆から70年。「公文協アートキャラバン事業 劇場へ行こう 3」により、 ITI〈演劇を通して世界を見る〉シリーズの一環として、「わが友、第五福竜丸」公演が実現した。作・演出の坂手洋二氏による実施報告をお届けする。


 今年(2024年)の3月1日は、1954年3月1日に第五福竜丸がビキニで被爆してから、ぴったり70年の、節目の日でした。その「ビキニ・デー・70年」を前に、〈燐光群創立40周年記念公演〉として、『わが友、第五福竜丸』を、〈第五福竜丸展示館〉を運営する〈第五福竜丸平和協会〉と共催で、全国7ヶ所のツアーを組み、上演することができました。そのうち4箇所を、ITI〈演劇を通して世界を見る〉シリーズの一環として上演できたことは、たいへん貴重な経験でした。

第五福竜丸の母港だった焼津。この歴史的な出来事の記憶を保ち続ける町での上演は、関係者のご遺族や平和運動の方々と交流し、思索を深めることができました。また、団体鑑賞してくださった三校の高校生たちとも、上演後の講座・ディスカッション等で、体験を共有できました。

当時、被ばくした漁船は、第五福竜丸だけではありません。高知では、マグロ船117隻が被ばくしており、今も問題意識を持ち続ける方がいます。上演会場のロビーでは、岡村啓佐さんによる写真展「NO NUKES ビキニの海は忘れない」、森本忠彦さんの紙芝居「ビキニの海のねがい」の原画展も、同時開催されました。

最終公演地は、第五福竜丸が建造された古座造船所があった、和歌山県串本町。本州最南端のホールでの上演でした。ふだんは演劇の上演が少ないところなので、イレギュラーなことも多かったのですが、ここで大千秋楽の上演ができたことは、大切な財産になりました。

このツアーは第五福竜丸のルーツと軌跡を辿る旅でもあって、自然の、海の美しさに触れることも多く、旅の各地で、第五福竜丸の記憶を大切にする人たちとの出会いも多かったのです。

これらの上演は、「公文協アートキャラバン事業 劇場へ行こう 3」 という枠がなければ、実現することができませんでした。

多くの人たちに支えられました。この公演のために尽力して下さった皆様に、あらためて感謝したいと思います。

坂手洋二(作・演出)

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