2024.3.31
NO.135

ワールド・シアター・レポート File. 11 「沖縄芝居」
寄稿:細井尚子

沖縄芝居の魅力を伝える 〜劇団うない 中曽根律子さんとともに〜

ワールド・シアター・レポート File. 11 「沖縄芝居」では、立教大学教授の細井尚子さんによる「沖縄芝居」の概要について講演の後、劇団うないの代表である中曽根律子さんをゲストにお招きして、女性だけの劇団「乙姫劇団」から劇団うない創立までの歩みなどを映像資料を交えながらお話を伺った。


2022年は沖縄復帰50周年、『国際演劇年鑑 2023』では「復帰50年に振り返る 激動の沖縄の歴史映す「沖縄芝居」その豊穣の世界」を、その延伸で23年の「ワールド・シアター・レポート」で「沖縄芝居」と、2年にわたって沖縄芝居を紹介する機会を頂いた。

『国際演劇年鑑 2023』に寄せた<論考>(pp.136-143)では、沖縄芝居の約150年の流れを追うために履歴書的な記述に留まらざるを得なかったが、編集部が加えて下さった多数の写真と図版に助けられ、さらには金城真次氏(沖縄県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者、国立劇場おきなわ芸術監督)と瀬名波孝子氏(沖縄県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者、沖縄県功労者など受賞多数)の楽しいお話(〈インタビュー〉 pp.147-155)により、沖縄芝居に体温が与えられた。また、<論考>では触れる余裕がなかった女性だけの一座については、垣花理恵子氏が「〈コラム〉 (pp.154-156)でまとめて下さったが、「ワールド・シアター・レポート」では、この女性だけの一座も当事者の言葉によって体温を与えたいと思った。

1949年に誕生した乙姫劇団は50年代半ばに全盛期を迎え、その後は沖縄芝居全体に逆風が吹く中、休団も挟みつつどうにか持続したものの2002年に閉団、その後継団体として04年に生まれたのが劇団うないである。劇団うない二代目代表の中曽根律子氏(沖縄県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者、沖縄県文化功労者など)は、乙姫劇団が衰退に向かう1964年に入団、乙姫劇団と劇団うないを繋ぐ方で、映像も交えつつ、上演文化の変化から、継承演目をどのように改編するか、基本である琉球舞踊の芝居における振りの相違など、具体的にお話し頂いた。乙姫劇団は専業劇団だが、劇団うないは皆、他の仕事を持ち、公演の度に稽古して舞台を務める。いわば副業のような位置づけだが、稽古の重要さ、舞台の責任は副業という語感では全く落ち着かない。24年に創立20周年を迎える劇団うないが大切にするのは「沖縄の言葉」だという。沖縄の人々の「私達の芝居」であることを改めて感じた。

細井尚子(立教大学異文化コミュニケーション学部教授)

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