2024.3.31
NO.135

会長挨拶

「ステージ・リーディング」という演劇手法

4月、又新しい年度を迎えました。しかし世界情勢は依然として混沌としています。

ウクライナでの戦乱は止まず、中東でのハマスの攻撃に始まったイスラエルの反撃にガザの人びとの悲惨な状況が日々伝えられてきます。紀元前17世紀に始まる民族や文化・宗教の対立をどうしたら平和という衣に包むことが出来るのか、我々が継続事業として取組む「ステージ・リーディング―紛争地域から生まれた演劇」が現状を明かしてくれます。昨年度も沢山の海外のテキストを会員自身が翻訳、演出、出演も兼ねて「ステージ・リーディング」という形で世に送り出してきました。

「ステージ・リーディング」~朗読とも違う、テキストを手にはするが同時に動きも伴う演劇手法こそ、ドラマの神髄がよく伝わると実は私、思っています。ある公共劇場に在籍した折にも何度か提案し、かなり難度の高いテキストをステージ・リーディングの手法で楽しんでいただきました。勿論、舞台装置や衣装を伴う本格的な舞台上演を行うことは残念ながら、今の協会には財務上、出来ない事もあります。しかし、時には過剰な舞台装置や衣装が中身の邪魔をすることもあります。何より、「リーディング」は表現者-演出、特に俳優自身の創造力で大きな感動をよぶことが出来ます。シンプルな様式だけに、鑑賞者・観客も自身の想像力を引き出しながら、演劇の描く世界を実感することが出来ます。「ステージ・リーディング」は欧米でもよく上演され、入場料を安く出来ることもあって人気の演目です。

昨年度、「紛争地域から生まれた演劇」シリーズで、以前、上演したことのある海外のテキストを東京以外の5地域の皆さんにお届け出来たのは大きな喜びです。異なった民族、文化を持つ人々が私たちと同じように笑い、苦しんでいることを感じ取っていただくこと、それは国際理解への第一歩と思うからです。

地方公演の舞台裏に、受付に、劇場の案内に、昨年度も新しいメンバーの顔が見えました。ITI/国際演劇協会日本センターは戦後から、約70年もの間、国際文化交流機関として活動してきました。世代交代が進む中で、若い方々の参加は心強いことです。今年度もより多くの方々に活動参加していただきたいと思っています。

国際演劇協会日本センター会長 永井多惠子

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