『国際演劇年鑑』(編集・発行)の事業枠組みの変更について
−独立行政法人日本芸術文化振興会からの受託事業「文化芸術の動向把握に向けた基礎資料収集事業」実施の経緯−
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●『国際演劇年鑑』の編集・発行
国際演劇協会日本センターは、日本と海外との演劇交流を促進するための知識基盤を形成するとともに、現場の演劇交流の多様なチャンネルを確保・拡大するための情報リソースとして、1972年より『国際演劇年鑑』を発行しており、令和4年度には『年鑑』の創刊50年を迎えています。
当『年鑑』は、日本編と海外編の二分冊で構成され、海外各国の演劇事情を継続的に紹介し、世界演劇の全体図の中に⽇本演劇を位置づけるとともに、⽇本の演劇状況を英語で紹介し、世界の演劇関係者の間に⽇本演劇に関する知識関⼼を高める役割を果たしています。海外各国・地域の演劇事情について、それぞれの国・地域の演劇の専門家が包括的に、かつ毎年継続して日本語で紹介する刊行物は、『国際演劇年鑑』が唯一のものであり、また、日本国内の演劇事情を、当該分野の専門家の執筆によって包括的かつ毎年継続して英語で紹介している刊行物も、当年鑑の他には存在しません。2014年からは日本編・海外編共に、WEB版も発行しており、世界中で閲覧されています。
●委託事業の枠組みの変更
本事業は、ここ2年間で全体の事業の枠組み(文化庁委託事業)が大きく替わり、事業名称も変更となりました。すなわち、事業の実施(委託)主体が文化庁から独立行政法人日本芸術文化振興会に替わり(令和5年度より)、さらに、令和6(2024)年度より事業名が「文化芸術の動向把握に向けた基礎資料収集事業」となりました(従来の事業名は、「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業(年鑑・調査部門)」)。この変更に伴い、当センターでは、『国際演劇年鑑』の新規コンテンツとして日本と海外の舞台芸術交流の実態調査を実施し、結果を公開しました。この新規事業の目的は、日本と海外との間の舞台芸術交流に係る個別情報をデータとして収集・記録し、交流の実態及び実相をなるべく客観的具体的に把握し理解することです。
●日本の舞台芸術の海外公演調査
この新規事業により令和6年度に初めて実施した「日本の舞台芸術の海外公演調査」は、2024年における日本の公演団による海外公演と、日本と海外の共同制作公演の実施状況を調査したものです。データの入手方法としては、海外公演助成機関や海外主要フェスティバル等のウェブサイト、当該団体へのアンケート送付、等を活用し、日本の公演団の海外公演と日本と海外との共同制作(団体名、公演名、公演期間、公演場所、等)について調査しました。当該調査の結果として、海外公演62件、共同制作20件の実施状況が詳細に記録されており、今後、舞台芸術交流の動向把握に大いに役立つことが期待されます。
●「紛争地域から生まれた演劇」シリーズについて
当センターでは、従来、本事業の主要な構成要素の一つとして、2009年度から2024年度まで16回にわたって『年鑑』特集企画『紛争地域から生まれた演劇』シリーズを実施してきましたが、今回の委託主体による事業目的・趣旨の変更(上述)に伴い、この枠組みでの開催はやむなく断念いたしました。同シリーズは、日本でまだ紹介されていない海外の優れた戯曲を、翻訳・リーディング上演・トーク・出版等の形で継続して紹介してきたものです。このシリーズで紹介された戯曲作品が、その後、他の劇場や劇団等によって上演される事例も多くあり、また、『紛争地域から生まれた演劇』(ひつじ書房)という同テーマを扱った書籍も出版されるなど、社会的に高い評価を受けております。ITI日本センターでは、独自に継続・発展の可能性を探ってまいりたいと思いますので、ひきつづき、ご支援ならびにご協力を賜りますようお願い申し上げます。
曽田修司(ITI日本センター常務理事・事務局長)