ITIアジア太平洋リージョナルカウンシル会議 参加報告
寄稿:三輪えり花

2025年11月20日から22日にかけてベトナム国ニンビンで開催された、国際演劇協会アジア太平洋地域協議会会議に日本センターとして参加しました。これはヴェトナム舞台芸術家協会とITIヴェトナムが共同主催する、国際実験演劇祭に併せて行われたものです。

出席が叶った国は、ヴェトナム、インド、スリランカ、韓国、モンゴル、フィリピン、そして日本。ほかに、ITI 本部の新事務局長と、その補佐、協議会代表、世界演劇大使、さらにジョージアとUSAを含むITI 本部理事ら、合わせて14名が集いました。食事は全てホテルでの円卓ビュッフェで、この食事タイムが大切な交流時間となりました。最初の昼食では偶然にも隣に新事務局長 チェン・ジョンウェン Chen Zhongwen と、補佐官 タン・イーミン Tang Yiming が座り、親しく交流を持つことができました。ジョンウェンさんは、前回の世界大会(ベルギー開催)に触れられ、永井会長と中山理事によろしくと述べられました。

この会議の目的は二つ。一つは、ITI主催オープンディスカッション【境界のない舞台:連携する世界を目指して演劇祭の未来をイメージし直そう】という、誰もが出席できるイベントです。もう一つは、アジア太平洋地域協議会の実務レベルの内輪の会議です。

<オープンコンファレンスでの関係者集合写真>

1  オープンディスカッション

選ばれたメンバー(USA、本部理事、日本、モンゴル、世界演劇大使、ジョージア、インド、韓国)がテーマに即した考えを述べました。

私は日本センターの現状をお話し、まだ国際演劇祭を開催したことはないがと断った上で、言語の壁をIT などを駆使してできるだけ滑らかにし、参加者同士の交流が弾む場を提供するのが望ましいとお話しました。

以下、とくに印象深かった発表をご紹介します。

USA理事は、トランプ政権になって、言論および行動の自由、表現の自由が奪われていきつつあることへの憤りを冷静に語りました。

本部理事は、演劇祭の経済的問題点に焦点を当て、プログラム内容が大事だったこれまでの演劇祭から、その地域発展のために政治家や財界を巻き込むものにする必要があると述べました。

ジョージア代表は、若手育成の場として地域発展と国際交流に貢献する音楽祭の例を挙げました。若い演奏家を旧ソビエト連邦諸国から募り、長期に渡る滞在型のキャンプを経て、音楽祭でその成果を発表するもので、ジョージア特産のワインと音楽祭とをかけ合わせ、大成功を納めているそうです。

演劇大使は、演劇はヨーロッパの文化であると勘違いされやすく、アジアや太平洋の演劇文化はいつまでも「伝統芸能」というジャンルに押しやられている、と問題提起をしました。我々は自らの演劇とは何かをもっと考えなくてはならない、と。国際演劇祭ならではのスピーチでした。

<三輪えり花氏 オープンコンファレンスでの発表>

2  アジア太平洋地域協議会会議

冒頭で「世界の芸術家を結びつけるために、政治や言葉が入り込めないところへ入り込むのが ITI の役割である。世界をより良く繋げるために、私たちは存在する」とITIの存在意義と目的が共有され、続いて、各センターからの現状報告と問題提起、ITI刷新五カ年計画の提示されたほか、ITI本部主催各イベントの開催場所等の現状報告がなされ、次のアジア太平洋協議会の会長を2名選出しました。

問題提起としては、国際演劇協会の「演劇」という名称についてと、ITIの存在意義についてがありました。演劇という単語は各国で「舞台の台詞劇」と捉えられており、ミュージカルやオペラ、バレエ、映画などのジャンルに働きかけにくいとの指摘があったのです。また、ITIが市民と演劇人のために何をしてくれるのかがわかりにくく、そのため会員獲得に難儀しているとの意見も出ました。これを受けて、ITI事務局長は、下記のように述べました。

「名称については我々も認識しており、サブタイトルに 【パフォーミングアートのための世界機構】と記している。ITIが何をしてあげられるところなのかについては、世相が近年大きく変化したこともあり、我々も設立当初からの変化にどう向き合うか、考えているところだ。各センターが簡潔に説明できるように、皆で一緒に考えていこう。」

ITI本部が意義深い国際的団体を目指し、世界をまとめて活動する意欲と、そのための実現工程を何枚ものスライドにしてきた姿勢とに敬意を表すると同時に、我ら日本センターもまだまだやれることはある、との思いを強くしました。

<新事務局長チェン・ジョンウェン氏を囲んで>

<今回の主催者ITIヴェトナムセンター リー・クイ・ドゥオン氏>

<協議会会議集合写真>

以上が、簡単ですが報告となります。
演劇芸術とそれに従事する人々は「重要で必要」と国家レベルで認識されるように働きかけようという情熱をひしひしと感じた今回の参加でありました。このような貴重な機会に参加でき、お世話になった関係各所に感謝いたします。


三輪えり花(演出家・俳優・翻訳家/ITI日本センター理事)

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