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2020.4.29
インターナショナル・ダンス・デイ メッセージ


 
2020年:グレゴリー・ヴヤニ・マコマ(ダンサー、コレオグラファー、俳優、ダンス教育者/南アフリカ)

このあいだ、とあるインタビューを受けて、ふいにダンスのことを深く考えるようになりました。私にとってダンスとは何なのか。人生の旅を振り返って気がついたのは、ダンスこそ私の日々の目的であり、向き合うべき挑戦であり、世界を捉えるための眼だということでした。


私たちはいま「ポスト・ヒューマン」とでもいうべき、想像を絶する悲劇的な時代から脱け出ようとしています。ダンスにはこれまで以上に目的が必要です。まだ人間性が存在したころの世界を思い出させるというという目的が。

仮想空間では、はるか昔から目的と共感がカタルシスを生み、解決をもたらしてきました。悲しみを癒し、日常にあふれるさまざまな厳しい現実、死や拒絶、貧困などを克服する力となってきました。安全と人間性の回復を担う世界のリーダーたちへ、ダンスはこれまでよりも強く警鐘を鳴らさねばなりません。ダンスに携わる私たちは、怒れる思想家たちを守る兵士であり、世界を変える一歩になるという意思を持っているのですから。ダンスは自由です。自由だからこそ、私たちは、困難に直面する世界中の人々を罠から解くことが自分たちの使命だと気づくのです。ダンスは政治ではありません。でも政治たりえます。なぜならダンスは人々をからめ、寄せ集めるファイバーであり、人間の尊厳を取り戻す力になれるから。


自分の体で踊るとき、宙を舞い、もつれあうとき、私たちは人の心を紡ぎ、魂に触れて、そのいたみを癒やしています。踊るなら、どうしてもそうでなければ。意思があれば、そのダンスは多くの人に届き、強靭で深遠なものとなります。もっとダンスを!!!

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Gregory Vuyani Maqoma

 1980年代後半に政況が悪化し、塞いだ気分から逃れるためダンスに打ち込む。90年代にはヨハネスブルクのダンスカンパニーMoving Into Dance(MID)で本格的にトレーニングを始める(02年からは同カンパニーの芸術監督を務めている)。99年には奨学生としてパフォーマンス・アーツ・ リサーチ・トレーニング・スタジオ(PARTS)に籍を置き、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル(Anne Teresa De Keersmaeker)のもとで学びながら、ヨハネスブルクに自身のカンパニーVuyani Dance Theatre(VDT)を創設した。



 同世代のアーティスト、アクラム・カーン(Akram Khan)やヴィンセント・マンツォエ(Vincent Mantsoe)、フォスティン・リニエクラ(Faustin Linyekula)、ダダ・マシロ(Dada Masilo)、シャネル・ウィンコック(Shanell Winlock)、シディ・ラルビ・シェルカウイ(Sidi Larbi Cherkaoui)、ンツァツァ・マサングゥ(Nhlanhla Mahlangu)、さらに演出家でマーケット劇場の芸術監督でもあるジェイムス・ンコボ(James Ngcobo)と親交が深く、共に作品を手がけている。

 受賞にFNB Vita Choreographer of the Year(1999、2001、2002)、Standard Bank Young Artist Award for Dance(2002)、Tunkie Award(2012)など。ダイムラー・クライスラー・コレオグラフィー・アワード(2002)およびロレックス・メントー&プロトジェ(2003)のファイナリスト。その他『Exit/Exist』でベッシー賞最優秀賞(2014)。ロレックス・アーツ・イニシアティブで審査員(2016-17)、グラハムズタウンで開催された国民芸術祭のメイン・ダンス・プログラムでキュレーターを務めた(2017)。フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受勲(2017)。ダンス教育に対して南アフリカ芸術文化省よりウシバ賞(Ushiba Award)を受賞(2018)。バージニア・コモンウェルス大学、セネガルのエコール・ドゥ・サーブル(Ecole De Sables)より招聘(2018)。2020年マラケシュで開催予定のBiennale de la Danse(Dance Biennial Africa)選考委員。最近は『Via Kanana』と『Cion: Requiem of Ravel’s Bolero』のアフリカ・ヨーロッパツアーを行っている。



 近作にウィリアム・ケントリッジ(William Kentridge)と手がけた『ザ・ヘッド・アンド・ロード』(2018年、テート・モダン・ギャラリーで初演)、イドリス・エルバ(Idris Elba)、クヮメ・クウェイ=アマ(Kwame Kwei-Armah)と手がけた『Tree』(2019年初演、マンチェスター国際フェスティバル、ヤング・ヴィック劇場共同製作)。

翻訳:国際演劇協会日本センター事務局