●4月29日は《インターナショナル・ダンス・デイ》
1982年、国際演劇協会のダンス委員会は《インターナショナル・ダンス・デイ》を創設し、モダンバレエの創始者であるジャン=ジョルジュ・ノヴェール(1727~1810)の誕生日である4月29日をその日と定めました。
毎年発表されるメッセージは、ダンスという普遍的な芸術形式を祝し、楽しみ、あらゆる政治的、文化的、民俗的な壁を越えて、世界中の人々を「ダンス」という共通言語によって一つにするために、世界中に発信されています。
メッセンジャーは、《インターナショナル・ダンス・デイ》を創設したITIのダンス委員会が、ITIの協力パートナーである世界舞踊連盟と協議して選出されています。
●今年のインターナショナル・ダンス・デイ・メッセージ
2022年:

COVID-19という災禍は、私たちが慣れ親しんだ自由な生活を奪い去りました。この悲劇の中にいると、「ダンス」や「ダンサー」の意味について問い直しを促されます。遠い昔、ダンスは身振り手振りでコミュニケーションする原始的な手段でした。それが観客の心を揺さぶり感動させるパフォーマンスアートへと発展したのです。ダンスは全身全霊を賭けるため、一度上演した同じ動きを繰り返すのが難しい、うたかたの芸術です。それは、はかない瞬間の集積であり、そしてダンサーは永遠に踊りつづける運命にあります。しかしCOVID-19は、そうしたダンスの本性を押さえつけ、行く手をさえぎったのです。
現在、状況は改善しつつあるとはいえ、ダンス公演はまだ多くの制約を受けています。だからこそ、人間の苦悩や不安、生きる意志や希望を伝えるために、ダンスとダンサーが宝石のように輝き世界を照らしていた頃の貴重な記憶を大切にしたいのです。
中世ヨーロッパで流行したペストをモチーフにさまざまな作品が生まれましたが、1841年6月28日、死を超える愛を描くバレエ『ジゼル』がパリ・オペラ座で上演され、爆発的な反響を呼んだことを思い起こすことも大事でしょう。以来、『ジゼル』はヨーロッパ全土はもとより、世界中で上演され、パンデミックに苦しめられる人類の心を慰め、励ましてきました。そして、世界の苦しみという重力から逃れようとするバレリーナの偉大な精神が、まさにその『ジゼル』の上演で初めて示されたと私は理解しています。
孤独で疲れた観客は、ダンサーとの共感や慰めを渇望しています。私たちダンサーは、自らの翼を羽ばたかせることで、ダンスという芸術を愛する人々の心に、希望とパンデミックを乗り越える勇気とを与えられると信じています。
今から胸の高鳴りをおさえられません。
姜 秀珍
* * *
KANG Sue-jin
淑明女子大学校(韓国・ソウル)舞踊学部名誉博士。シュツットガルト・バレエ団のソリスト、プリンシパル・ダンサーを15年以上務める。2007年、ドイツの称号「宮廷舞踊家(Kammertänzerin)」を授与される。2018平昌冬季オリンピック名誉大使。
姜秀珍は、その名声と技能を生かし、障害を持つ子供たちにダンスを教える活動をおこなっている。
〈受賞/栄誉歴〉
1985年 ローザンヌ国際バレエコンクール(スカラシップ賞)
1990年 大韓民国大統領賞
1999年 ブノワ賞(最優秀女性ダンサー賞)
1999年 韓国・3等宝冠文化勲章
2001年 第9回KBSグローバル韓国賞(芸術・文化部門)
2002年 湖巌(ホアム)財団湖巌賞(芸術部門)
2007年 ジョン・クランコ協会ジョン・クランコ賞(ドイツ)
2007年 韓国・国民勲章石榴章
2014年 ドイツ・バーデン・ヴュルテンベルク州功労勲章
2014年 皐雲(コウン)財団皐雲文化賞
2015年 韓国文化体育観光部世宗文化賞(芸術部門)
2015年 韓国ジャーナリスト協会「誇らしい韓国人大賞」(芸術・文化部門)
2016年 パラダイス文化財団パラダイス賞特別功労部門
2016年 韓国ドイツ協会第9回李(イ)弥勒(ミルク)賞
2017年 第7回大韓民国韓流大賞純粋芸術部門特別功労賞受賞
*姜秀珍については、以下のサイトもご覧ください。
http://www.korean-national-ballet.kr/en/staff/artistic_list
https://en.wikipedia.org/wiki/Kang_Sue-jin
翻訳:荻野哲矢
● 歴代のインターナショナル・ダンス・デイ・メッセージ発信者
2021 |
バレエダンサー(シュトゥットガルト・バレエ・プリンシパル、 |
ドイツ |
|
2020 |
ダンサー、コレオグラファー、俳優、ダンス教育者 |
南アフリカ |
|
2019 |
カリーマ・マンスール |
ダンサー、コレオグラファー、教育者 |
エジプト |
2018 |
サリア・サヌー |
– |
ブルキナファソ |
2018 |
ジョルジェット・ジバーラ |
ダンサー、振付家、キャスター、教育者 |
レバノン |
2018 |
ウィリー・ツァオ |
振付家、教育者、キュレーター、マネージャー、ディレクター |
中国 |
2018 |
オハッド・ナハリン |
振付家、バットシェバ舞踊団芸術監督、舞踊言語GAGA開発者 |
イスラエル |
2018 |
マリアネラ・ボアン |
振付家、ダンサー、教育者 |
キューバ |
2017 |
ダンサー、振付家、トリシャ・ブラウン・ダンスカンパニー芸術監督 |
アメリカ |
|
2016 |
振付家、演出家、舞台美術家、芸術家 |
サモア |
|
2015 |
フラメンコダンサー、振付家 |
スペイン |
|
2014 |
サンティー・スミス |
振付家、ダンサー、カハーウィ・ダンスシアター芸術監督 |
カナダ |
2013 |
林 懐民(リン・フワイミン) |
振付家、クラウド・ゲイト・ダンスシアター芸術監督 |
台湾 |
2012 |
シディ・ラルビ・シェルカウイ |
ダンサー、振付家 |
ベルギー |
2011 |
アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル |
振付家、ローザス芸術監督 |
ベルギー |
2010 |
フリオ・ボッカ |
バレエダンサー |
アルゼンチン |
2009 |
アクラム・カーン |
ダンサー |
イギリス |
2008 |
グラディス・アガラス |
振付家、教育者 |
南アフリカ |
2007 |
サシャ・ヴァルツ |
振付家、ダンサー |
ドイツ |
2006 |
ノロドム・シハモニ |
カンボジア国王、元ダンサー・バレエ教師 |
カンボジア |
2005 |
吉田 都 |
バレエダンサー |
日本 |
2004 |
スティーヴン・ペイジ |
ダンサー、振付家、バンガラ・ダンスシアター芸術監督 |
オーストラリア |
2003 |
マッツ・エック |
振付家 |
スウェーデン |
2002 |
キャサリン・ダナム |
ダンサー、振付家、文化人類学者 |
アメリカ |
2001 |
ウィリアム·フォーサイス |
ダンサー、振付家 |
アメリカ |
2000 |
アリシア・アロンソ/イリ・キリアン |
バレエダンサー、振付家/振付家 |
キューバ/チェコ |
1999 |
マフムード・レダ |
ダンサー、振付家 |
エジプト |
1998 |
大野一雄 |
舞踏家 |
日本 |
1997 |
モーリス・ベジャール |
振付家 |
フランス |
1996 |
マイヤ・プリセツカヤ |
バレエダンサー |
ロシア |
1995 |
マレー・ルイス |
ダンサー、振付家、教育者 |
アメリカ |
1994 |
載 愛蓮(タイ・アイリェン) |
ダンサー、振付家、教育者 |
中国 |
1993 |
マギー・マラン |
振付家 |
フランス |
1992 |
ジェルメーヌ・アコグニー |
ダンサー、振付家、Jant-Bi創設者 |
セネガル/フランス |
1991 |
ハンス・ファン・マネン |
バレエダンサー、振付家、ネザーランド・ダンス・シアター創設者 |
オランダ |
1990 |
マース・カニングハム |
ダンサー、振付家 |
アメリカ |
1989 |
ドリス・ライネ |
バレエダンサー、振付家、教育者 |
フィンランド |
1988 |
ロビン・ハワード |
ザ・プレイス創設者、実業家 |
イギリス |
1987 |
ITIダンス委員会/p> |
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1986 |
チェトナ・ジャラン |
カタック・ダンサー |
インドネシア |
1985 |
ロバート・ジョフリー |
バレエ振付家 |
アメリカ |
1984 |
ユーリー・グリゴローヴィチ |
バレエ振付家、ボリショイ・バレエ団バレエマスター |
ロシア |
1983 |
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1982 |
ヘンリク・ノイバウアー |
バレエ振付家、演出家、教育者 |
スロヴェニア |