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3月27日《ワールド・シアター・デイ》


ITIは3月27日を世界の国々が舞台美術を通して平和を願う《ワールド・シアター・デイ》とし、1962年からこの日にメッセージを発信しています。
https://www.world-theatre-day.org/

メッセージの映像はこちらからご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=gg15aPydLbE

今年のワールド・シアター・デイ・メッセージ

ウィレム・デフォー (アメリカ) Willem Dafoe

私は主に映画俳優として知られていますが、ルーツは深く演劇にあります。1977 年から 2003 年まで、ウースター・グループのメンバーとして、ニューヨークの小劇場パフォーミング・ガレージでオリジナルの作品をつくり、上演し、世界中をツアーしてきました。また、リチャード・フォアマン、ロバート・ウィルソン、ロメオ・カステルッチとも仕事をしました。現在はヴェネツィア・ビエンナーレ演劇部門の芸術監督を務めています。この職務に任命されたこと、世界で起きている出来事、そして私自身の演劇へ戻りたいという思いは、「演劇には唯一無二のポジティブな力があり、極めて重要なものなのだ」という私の信念を揺るぎないものにしました。

私がニューヨークを拠点とする劇団ウースター・グループで俳優としてささやかな一歩を踏み出した頃は、私たちの劇場での公演に観客がほとんど来ないことがよくありました。当時のルールでは、観客の数が出演者より少なければ公演を中止できましたが、私たちは一度も中止しませんでした。劇団員の多
くは演劇の専門教育を受けておらず、異なる分野の人間が集まって演劇をつくっていました。だから「ショー・マスト・ゴー・オン――何があっても幕を上げる」を信条にしていたわけではありません。ただ、私たちは観客との約束を守る責任を感じていたのです。

私たちは昼間に稽古をし、夜にはその過程をワーク・イン・プログレスとして公開していました。一つの作品をつくるのに数年を費やすこともあり、その間は過去の作品のツアーで生計を立てていました。

一つの作品に何年も取り組むことは、時に退屈で稽古が辛く感じることもありましたが、ワーク・イン・プログレスのショーイングはいつもエキサイティングでした。たとえ観客がわずかで、そのことが私たちのしていることへの関心の低さを痛烈に物語っていたとしてもです。どんなに観客が少なくても、目撃者としての観客こそが、演劇に意味と命を与えるのだと気づかされました。

ギャンブル場の「YOU MUST BE PRESENT TO WIN――その場にいなければ、当選無効」の看板と同じです。緻密に計算され、デザインされていても、毎回必ず異なる「創造という行為」をリアルタイムで共有する体験。それこそが演劇の明らかな強みです。社会的にも政治的にも、自分自身やこの世界を理解するために演劇がこれほど重要で不可欠になったことはありません。

今、誰もが気づいていながら、見て見ぬふりをしている大きな問題は、新しいテクノロジーとソーシャルネットワーキングです。これらは「つながり」を約束しながら、実際には人々を分断し、孤立させているように見えます。私自身は SNS はしていませんが、毎日コンピュータを使い、俳優として自分の名前を検索したり、AI に情報を尋ねたりします。しかし、人間同士の触れ合いがデバイスとの関係に取って代わられようとしている、そのリスクに気づかないとしたら、あまりに盲目だと言わざるを得ません。テクノロジーの中には私たちの役に立つものもありますが、コミュニケーションの輪の向こう側に誰がいるのか分からないということは根深い問題で、「真実と現実の危機」を招いています。インターネットは疑問を投げかけることはできても、演劇が創り出すセンス・オフ・ワンダー――自分が触れ、見たものに驚き、感動する感覚を生み出すことはほとんどありません。その驚嘆の感覚とは、他者への配慮、他者との関わり、そして行動と応答の輪の中に存在する人々による自然発生的なコミュニティから生まれるものなのです。

俳優として、そして演劇をつくる者として、私は演劇の力を信じ続けています。世界がますます分断的、支配的、暴力的になっているように見えるこの世界において、私たちシアター・メイカーの課題は、演劇を単なる気晴らしの娯楽を目的とした商業的なものや、形骸化したつまらないしきたりを守るだけの
ものへと堕落させることなく、むしろ、人々、コミュニティ、文化をつなぎ、そしてなによりも「私たちはどこへ向かっているのか」を問い直す力を育てることなのです。

優れた演劇とは、私たちの考え方に疑問を投げかけ、私たちが目指すものをイメージするよう働きかけるものです。
私たちは社会的な動物であり、生物学的に世界と関わるようにつくられています。すべての感覚器官は出会いのための入り口であり、その出会いを通じて、私たちは自分が何者であるかをより深く理解できるようになります。物語、美学、言語、身体表現、空間デザイン——総合芸術としての演劇は、かつて
何があったのか、今何が起きているのか、そして私たちの世界がどうなり得るのかを、私たちに見せてくれるのです。

ウィレム・デフォー

* * * * *

Willem Dafoe
ウィレム・デフォー

俳優 、シアターメイカー。ヴェネツィア・ビエンナーレ演劇部門
https://www.labiennale.org/en/theatre/ 2026芸術監督。ウースター・グループ(The Wooster Group)https://thewoostergroup.org/ の創設メンバーの一人で、ニューヨークの小劇場パフォーミング・ガレージを拠点に(1977〜2004 年)、前衛演劇への独自のアプローチを展開した。
その後、ロバート・ウィルソン(RobertWilson)https://robertwilson.com/マリーナ・アブラモヴィッチ(Marina Abramović)https://www.mai.art/ 、リチャード・フォアマン( Richard Foreman) https://writing.upenn.edu/epc/mirrors/ontological.com/ 、
ロメオ・カステルッチ(Romeo Castellucci)https://www.societas.es/ らと協働。1980年代初頭には映画界に進出、インディペンデント映画からメジャー作品まで幅広く活躍する多才な俳優として国際的な称賛を得る。アカデミー賞に4度ノミネートされ、2018年にはヴェネツィア国際映画祭で最優秀男優賞(ヴ ォルピ杯)を受賞https://www.labiennale.org/en/news/official-awards-75th-venice-film-festival
演劇への真摯な取り組みは、今もなお彼の芸術的なヴィジョンと表現の実践を形づくっている。

(翻訳:中島香菜)

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