●4月29日は《インターナショナル・ダンス・デイ》
1982年、国際演劇協会のダンス委員会は《インターナショナル・ダンス・デイ》を創設し、モダンバレエの創始者であるジャン=ジョルジュ・ノヴェール(1727~1810)の誕生日である4月29日をその日と定めました。
毎年発表されるメッセージは、ダンスという普遍的な芸術形式を祝し、楽しみ、あらゆる政治的、文化的、民俗的な壁を越えて、世界中の人々を「ダンス」という共通言語によって一つにするために、世界中に発信されています。
メッセンジャーは、《インターナショナル・ダンス・デイ》を創設したITIのダンス委員会が、ITIの協力パートナーである世界舞踊連盟と協議して選出されています。
●今年のインターナショナル・ダンス・デイ・メッセージ
Marianela NÚÑEZ, Argentina
Dancer
マリアネラ・ヌニェス(アルゼンチン)
ダンサー
歴史を作るにはたったひとつの記憶だけでは十分ではありません。劇場の歴史は、それぞれ個人の歴史と同じように、他者、すなわち他の劇場の歴史であり、そしてまたダンスという芸術がどのように他の地域へと伝わり、発展してきたかという歴史なのです。
英国ロイヤル・バレエ団の壁には、そのたどってきた歴史を物語る写真が大切に飾られています。歴史は時代それぞれの主人公を求めます。そしてアルゼンチンのダンスもまた、そうした主人公たちの名とともに輝いているのです。
過去のこだまである歴史に向き合わず、顔も名も見せずに、静かな匿名の海へと身を沈める組織も多くあります。
しかし、たとえばアルゼンチン・ダンス・カウンシルなどのようなユネスコ傘下の国際演劇協会(ITI)が推進・支援する組織は忘却を止める壁の役割を常に果たしています。
私は、後世に伝えられるべきダンス界を豊かにしてきた巨匠、アーティスト、振付家たちの歴史をすくいあげ、よみがえらせることに尽力する皆さんとともにいます。私たちは傍観者ではなく、鍛錬された技術と誇りと献身によって築かれた伝統の継承者であり、美を愛する使命によって道を歩んでいるのだと決意しましょう。私たちは現在と未来に気をとられがちですが、過去という強い基盤がなければ、あるいは大地の豊かさがなければ、ダンスという樹木は花を咲かせられません。木の根、すなわちルーツは伝統であり、そして私たちの栄養なのです。
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Marianela NÚÑEZ, Argentina
Dancer
マリアネラ・ヌニェス(アルゼンチン)
ダンサー
マリアネラ・ヌニェスは、1982年3月23日、アルゼンチンのサン・マルティン生まれ。コロン劇場高等芸術研究所出身。現在、バレエ界の第一線で活躍している。1997年にロンドンの英国ロイヤル・バレエ団に入団し、プリンシパル・ダンサーに昇進。『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『ロミオとジュリエット』、『ジゼル』などのレパートリーで忘れがたいパフォーマンスを披露し、世界中の観客を魅了してきた。
ブノワ賞やローレンス・オリヴィエ賞など有名な国際賞や、アルゼンチン・ダンス・カウンシルのマリア・ルアノヴァ賞、10年間で最も優れたダンサーとして2009年のコネックス賞などアルゼンチン国内の賞を受賞している。
これまで高い評価を受け続け、特にオーロラ姫役(『眠れる森の美女』)は、その卓越した表現力とテクニックで観客の心をとらえ、ロイヤル・バレエ団がロイヤル・オペラ・ハウスに所属した1946年以降の最高のパフォーマンスとされている。
ヌニェスはテクニックが優れているだけでなく、高い気品を備え、さらにダンスと未来の世代へのコミットメントを鮮明にしている。そのおおらかで他人を思いやる人柄は、バレエ界を超えて、輝く模範となっている。
翻訳:荻野哲矢
Translation : Ogino Tetsuya